01なぜいま「BPaaS」が注目されているのか
BPaaSという用語が注目される背景には、3つの動きがあります。
第一に、SaaS導入の限界が明らかになりつつあることです。SaaSは業務の標準化・自動化に有効ですが、社内の運用設計・例外処理・人材定着までは自動的に解決しません。SaaSを導入したが、結局Aさんしか使いこなしていない、ツールが入っても標準化が進まないという声は珍しくありません。
第二に、BPO(業務プロセスアウトソーシング)に対する見方の変化です。BPOは業務を丸ごと外部に委ねる選択肢として有効ですが、社内に業務ノウハウが残らないという課題があります。経営判断や業務改善の主体性を社内に保ちたい企業にとっては、丸投げ型のBPOだけでは満たされないケースがあります。
第三に、AIの進化です。AIによるデータ化や、業務代行スタッフがSaaSと連動して動く運用体制が現実的になりつつあります。SaaSだけでも、BPOだけでもなく、組み合わせて使う業務モデルが現実の選択肢として成立してきました。
こうした背景の中で、BPaaSという業務モデルへの関心が高まっています。ただし、BPaaSがSaaSやBPOより優れているというわけではありません。それぞれに守備範囲があり、自社の業務状況に応じて選び分ける視点が重要になります。
02BPaaSとは|業務代行とSaaSを組み合わせた新しい業務モデル
BPaaSは「Business Process as a Service」の略で、SaaSの提供と業務代行を組み合わせて、業務プロセスをサービスとして提供する業務モデルを指します。
例えば、請求書処理のSaaSを導入するだけでなく、そのSaaSの運用や例外処理を外部の業務代行スタッフが一体で担う形が、BPaaSの典型例です。SaaSがツール部分を担い、業務代行スタッフが運用や判断の一部を担い、その両方を一つのサービスとして契約する設計です。
ただし、BPaaSの定義や範囲は事業者によって異なる場合があります。
SaaS+業務代行のセット提供をBPaaSと呼ぶ事業者もあれば、より広く業務プロセスのデジタル化と外部委託の一体提供をBPaaSと呼ぶ事業者もあります。本記事では、BPaaSをSaaS・AI・業務代行を組み合わせて、業務プロセスをサービスとして提供する業務モデルとして整理します。
03SaaS・BPO・BPaaSの違い|それぞれの守備範囲を整理する
SaaS・BPO・BPaaSの違いを理解するには、それぞれの提供形態・カバー範囲・社内に残る業務を整理することが出発点になります。3者は対立する選択肢ではなく、それぞれ守備範囲が異なる業務モデルです。
SaaSの守備範囲
SaaS(Software as a Service)は、業務に必要なソフトウェアをクラウド経由で提供するサービスです。インストール不要で、業務フローの自動化・データ管理・ワークフロー化などに有効です。
社内に残る業務は、SaaSの設定・運用ルール・例外対応・社内浸透の取り組みです。SaaSはツールとして強力ですが、ツールを動かすのは社内のメンバーであり、運用設計と運用責任は社内に残ります。
BPOの守備範囲
BPO(Business Process Outsourcing)は、業務プロセス全体を外部に委託する業務モデルです。経理業務・カスタマーサポート・人事業務など、業務プロセスを丸ごと外部に任せられます。
社内に残る業務は、委託先の管理・契約管理・成果物の確認です。BPOは業務負荷を大きく下げられる一方、社内に業務ノウハウが残らないという特性があります。業務改善の主体性をどこまで社内に保つかは、BPO契約の設計次第になります。
BPaaSの守備範囲
BPaaSは、SaaSと業務代行を組み合わせて提供する業務モデルです。SaaSがツール部分を担い、業務代行スタッフが運用や判断の一部を担い、その両方を一つのサービスとして契約します。
社内に残る業務は、経営判断・例外承認・社内責任者の判断業務です。BPaaSは全自動化でも全外注でもなく、社内で持つべき判断と、外部で吸収できる定型処理を切り分けて、組み合わせて運用するアプローチになります。
SaaSとBPOの違い|BPaaSとの位置関係
SaaSとBPOは、提供形態が根本的に異なります。SaaSはツールの提供、BPOは業務プロセスの代行です。SaaSは社内が業務を回し、BPOは社外が業務を回します。
BPaaSは、SaaSとBPOの間にある業務モデルとして位置づけられます。ツールも、業務プロセスの一部代行も、一体で受けられる構造です。SaaSのように社内に責任が残り、BPOのように業務負荷が下がる、その中間を設計するのがBPaaSの特徴と言えます。
3者の使い分け比較
3者の違いを、観点別に整理します。
| 観点 | SaaS | BPO | BPaaS |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | ツール提供 | 業務プロセス代行 | ツール+業務代行の一体提供 |
| 向いている業務 | 標準化された定型業務 | 業務プロセス全体の外部化 | 定型業務+一部例外処理 |
| 社内に残る業務 | 運用設計・例外処理・社内浸透 | 委託管理・成果物確認 | 経営判断・例外承認 |
| 向いている企業 | SaaSで業務が回る運用体制がある | 業務を丸ごと外部に出したい | SaaSだけでは標準化が進まず、丸投げも避けたい |
| 注意点 | 運用設計を社内で担う必要 | 社内ノウハウが残らないリスク | 事業者ごとに定義・範囲が異なる |
自社にどの業務モデルが向いているかは、業務量・人材状況・業務設計の整理度合いなどによって変わります。BPaaSが最も新しいから良いという選び方ではなく、自社の状況に合う選択肢を整理する視点が重要です。
04BPaaSのメリット
BPaaSのメリットは、SaaSとBPOの長所を組み合わせて活用できる点にあります。
第一に、定型業務の処理コストを下げやすい点です。SaaSによる自動化と業務代行による定型処理を組み合わせることで、社内人材の作業時間を圧縮できます。
第二に、社内人材を判断業務にシフトさせやすい点です。定型処理を外部に任せることで、社内の経理担当者は承認・例外判断・経営報告などの判断業務に集中しやすくなります。
第三に、業務設計と運用を一体で任せられる点です。SaaSの導入だけでは業務設計が整理されないことがありますが、BPaaSでは業務代行スタッフが運用に関わるため、業務設計の整理がサービスの中に組み込まれます。
第四に、SaaS単独・BPO単独では難しい中間領域をカバーできる点です。定型業務と例外処理が混在する経理業務などでは、SaaSだけだと例外処理が社内に残り、BPOだけだとノウハウが残らないという課題が生じます。BPaaSは、この中間領域に対応しやすい業務モデルです。
ただし、これらのメリットはすべての企業で発揮されるわけではありません。自社の業務状況・体制・コスト感によって、BPaaSが効果を発揮するかどうかは変わります。
05BPaaSの注意点・デメリット
BPaaSには、検討前に整理しておきたい注意点もあります。
第一に、自社の業務設計が未整理だと効果が出にくいことです。BPaaSは、業務プロセスをサービス化するモデルのため、自社の業務がそもそも整理されていなければ、外部に任せても期待した効果が出にくくなります。導入前に業務フローの可視化が必要です。
第二に、社内ノウハウの蓄積が課題になりやすいことです。定型処理を外部に任せると、社内のメンバーが定型業務の経験を積みにくくなります。判断業務のノウハウは社内に残せる一方で、定型業務の知識をどう継承するかの設計が必要です。
第三に、コスト構造を事前に整理しないと負担が読みにくいことです。BPaaSは月額契約・従量課金・初期設計費用など、複数のコスト要素を含む場合があります。導入前に効果指標(KPI)とコスト構造を整理しておくことが重要です。
第四に、事業者によって定義・スコープが異なる点です。BPaaSという言葉は、事業者ごとに範囲や設計思想が異なる場合があります。契約前に、どこまでが業務代行の範囲か、どこからが社内責任かを明確にする必要があります。また、税務代理・税務書類の作成・税務相談などは、税理士法上の税理士業務にあたる可能性があるため、税理士・顧問税理士などの専門家に確認する必要があります。BPaaSや業務代行で扱う業務範囲とは切り分けて整理することが重要です。
(両立と組み合わせによるカバー領域)
運用設計・例外処理・社内浸透
が自社に残る
社内ノウハウ蓄積・判断業務
が課題として残る
自動化できる領域を拡張する
埋まる領域
06経理・バックオフィス領域でBPaaSが必要になる理由
経理・バックオフィス業務は、定型業務と例外処理と制度対応が複雑に混在する領域です。だからこそ、SaaSだけでも、BPOだけでも対応しきれない中間領域が生まれます。BPaaS的なアプローチが経理・バックオフィスで有効になりやすいのは、この構造があるためです。
SaaSだけでは標準化が完成しない
経理SaaSを導入しても、運用ルールの整備・例外処理の判断・社内浸透の取り組みは社内で行う必要があります。SaaSを導入したが結局Excelで管理している、一部の担当者しか使っていない、という状況の背景には、業務設計がSaaSに追いついていないという構造があります。
経理業務の標準化は、ツール導入だけでは完成しません。業務設計・運用ルール・改善サイクルの整備が並行して必要です。
詳しくは【経理業務の属人化を解消する方法】を参照ください。
BPOの設計によっては、社内に業務ノウハウが残りにくくなる場合がある
経理BPOで業務を丸ごと外部に委ねると、業務負荷は大きく下がります。一方で、契約の設計次第では、社内に業務ノウハウが残りにくくなる、改善の主体性が外部に依存しやすい、契約終了時に業務を戻すコストが大きくなる、といった課題が生じる場合があります。
経営判断に直結する業務や、業務改善の主体性を社内に保ちたい企業にとっては、丸投げ型のBPOでは満たされないニーズがあるケースもあります。
経理BPaaSで任せられる業務の例
経理BPaaSで任せやすい業務には、たとえば次のようなものがあります。
- 請求書の受領・データ化
- 支払前チェック・振込前確認
- 消込確認・突合作業
- 経理業務の標準化支援
ただし、税務代理・税務書類の作成・税務相談などは、税理士法上の税理士業務にあたる可能性があるため、税理士・顧問税理士などの専門家に確認する必要があります。
各社の具体的な比較については、「経理BPaaSとは?SaaSとの違いと請求書処理を丸ごと任せる方法」で詳しく解説しています。本記事ではBPaaSの全体概念の整理に集中するため、個別の業務範囲や具体例は既存記事を合わせてご覧ください。
(業務フロー上の位置とカバー領域)
(税務代理・税務書類作成・税務相談は税理士の専門領域とされる場合があり、顧問税理士・専門家への確認が推奨されます)」
07BPaaS導入前に整理すべきこと
BPaaSの導入を検討する前に、自社で整理しておきたい4つの観点があります。
現状の業務フローを可視化する
BPaaSは業務プロセスをサービス化するモデルのため、自社の業務フローが整理されていることが前提になります。誰が・いつ・何を・どんな判断で行っているかを可視化することから始めるのが現実的です。
社内で持つべき業務と外部に任せる業務を切り分ける
すべての業務を外部に出すのが正解ではありません。経営判断・例外承認・取引先個別の対応・税務判断など、社内または専門家に残すべき業務を明確にしたうえで、外部に任せられる範囲を整理する必要があります。
コスト構造と効果指標を事前に設計する
BPaaSは、月額契約・従量課金・初期設計費用など、複数のコスト要素を含む場合があります。導入したあとに効果が見えない状態を避けるため、効果指標(KPI)とコスト構造を事前に設計しておくことが重要です。
社内ノウハウの蓄積方針を決める
定型処理を外部に任せると、社内のメンバーが定型業務の経験を積みにくくなります。判断業務のノウハウは社内に残せる一方、定型業務の知識をどう継承するか、または継承しない方針を明確にするかを決める必要があります。
08クロスチェックが支援できること|SaaS/BPO/BPaaSの選び分けと、自社に合う業務モデルの設計
(SaaS×AI×業務代行の組み合わせ)
データ管理
ワークフロー
例外検知
例外処理
確認業務
業務設計をデザイン
クロスチェックは、請求書処理・支払業務・経理業務改善の領域で、企業の業務効率化を支援しています。
多くの効率化支援がSaaSを売るか経理を丸ごと代行するのどちらかに偏りやすいなか、クロスチェックは その中間にあたる組み合わせの領域での支援を強みとしています。SaaSによる自動化、AIによるデータ処理、業務代行スタッフによる確認業務などを、自社の業務設計に応じて組み合わせるご提案が可能です。
ただし、クロスチェックはBPaaSが正解と決めつけません。SaaSのままで業務が回るならSaaSの活用支援を、BPOで丸ごと任せる方が合うならBPO的な業務代行支援を、SaaSと業務代行の組み合わせが合うならBPaaS的な設計をというように、自社の業務状況に合う業務モデルを一緒に整理するアプローチです。
SaaSを導入したが運用が定着しない、BPOを検討しているが丸投げに踏み切れない、BPaaSという言葉を聞いたが自社に合うか分からない。こうした段階でも構いません。具体的な支援範囲・サービス内容は案件ごとに自社の業務状況を踏まえてご相談ください。
詳細は【サービスページ】からもご確認いただけます。
09業務モデルで迷ったときに合わせて読む関連記事
BPaaSの全体概念を整理したうえで、自社の業務状況に応じて深掘りしたいテーマがある場合は、関連記事を合わせてご覧ください。
経理BPaaS・AI×請求書処理の実務応用:BPaaSを経理業務に適用した具体例は、「経理BPaaSとは?SaaSとの違いと請求書処理を丸ごと任せる」で詳しく解説しています。
請求業務全体の効率化:受領・確認・承認・支払・保管の全体俯瞰は【請求業務を効率化する方法】を参照ください。
請求書受領フェーズの深掘り:紙・PDF・電子の混在運用、OCR・データ化、電子帳簿保存法対応の保管などは【請求書受領業務を効率化する方法】で深掘りしています。
支払業務の深掘り:支払予定・振込・消込・支払前チェックなどは【支払業務を効率化する方法】を参照ください。
経理業務全体の属人化と標準化:属人化の構造論と標準化への打ち手は【経理業務の属人化を解消する方法】で整理しています。
月末月初の業務集中の打ち手:月次決算早期化を含む月末月初の効率化は【月末月初の経理業務を効率化する方法】を参照ください。
10BPaaSに関するよくある質問
Q. BPaaSとは何ですか?
BPaaSは「Business Process as a Service」の略で、SaaSと業務代行を組み合わせて、業務プロセスをサービスとして提供する業務モデルを指します。事業者によって定義や範囲は異なる場合があり、契約前に対象業務を確認することが重要です。
Q. BPaaSとSaaSの違いは何ですか?
SaaSはソフトウェアをサービスとして提供するモデル、BPaaSはソフトウェアと業務代行を一体で提供するモデルです。SaaSはツールを社内で運用する前提、BPaaSは運用の一部を外部が担う前提という違いがあります。
Q. BPaaSとBPOの違いは何ですか?
BPOは業務プロセス全体を外部に委託するモデル、BPaaSはSaaSと業務代行を組み合わせて業務をサービス化するモデルです。BPOは丸ごと任せる構造、BPaaSは社内と外部で業務を切り分けて組み合わせる構造という違いがあります。
Q. SaaSとBPOの違いは何ですか?
SaaSはツールを社内に提供するモデル、BPOは業務プロセスを外部が代行するモデルです。SaaSは社内が業務を回し、BPOは外部が業務を回すという根本的な提供形態の違いがあります。
Q. BPaaSのメリットは何ですか?
定型業務の処理コストを下げやすい、社内人材を判断業務にシフトしやすい、業務設計と運用を一体で任せられる、SaaS単独・BPO単独では難しい中間領域をカバーできる、といった点が挙げられます。ただし、すべての企業で同じ効果が出るわけではありません。
Q. BPaaSの注意点・デメリットは何ですか?
自社の業務設計が未整理だと効果が出にくい、社内ノウハウの蓄積方針の整理が必要、コスト構造を事前に整理する必要、事業者ごとに定義・スコープが異なる、といった点があります。導入前の整理が重要です。
Q. SaaSを導入している企業でもBPaaSは必要ですか?
SaaSで業務が回っている企業は、無理にBPaaSを検討する必要はありません。SaaS導入後も標準化が進まない、運用ルールが定着しない、社内人材を判断業務にシフトしたい、といった課題がある場合に検討対象になります。
Q. BPOを利用している企業でもBPaaSは必要ですか?
BPOで業務が回っている企業も、無理にBPaaSを検討する必要はありません。BPO全外注で社内ノウハウが残らない、業務改善の主体性を社内に保ちたい、といった課題がある場合に検討対象になります。
Q. BPaaS導入前に整理すべきことは何ですか?
現状の業務フローの可視化、社内で持つべき業務と外部に任せる業務の切り分け、コスト構造と効果指標の事前設計、社内ノウハウの蓄積方針の検討、などが挙げられます。
Q. 経理BPaaSは税理士業務に該当しますか?
経理BPaaSや経理業務代行で扱う範囲は、請求書処理、データ化、確認業務、支払準備、業務フロー整備などが中心になることが多いです。一方、税務代理・税務書類の作成・税務相談などは、税理士法上の税理士業務にあたる可能性があるため、税理士・顧問税理士などの専門家に確認する必要があります。BPaaSの導入を検討する際は、どこまでを業務代行に任せ、どこからを税理士・社内責任者が判断するかを切り分けることが重要です。
Q. 中小企業でもBPaaSを活用できますか?
企業規模よりも、業務量・人材状況・業務設計の整理度合いによってBPaaSとの相性は変わります。中小企業でも、定型業務の負荷が高く社内人材を判断業務にシフトしたい場合は検討対象になります。具体的な判断は無料相談で整理することが可能です。
11まとめ
BPaaSは、SaaSと業務代行を組み合わせて業務プロセスをサービスとして提供する業務モデルです。SaaSのように社内に責任を残しつつ、BPOのように業務負荷を下げる、その中間を設計する選択肢として注目されています。
ただし、BPaaSがSaaSやBPOより優れているというわけではありません。SaaS・BPO・BPaaSはそれぞれ守備範囲が異なり、自社の業務状況・人材体制・標準化の進捗度合いに応じて選び分ける視点が重要です。
経理・バックオフィス領域でBPaaSが有効になりやすいのは、定型業務と例外処理と制度対応が複雑に混在する構造があるためです。SaaSだけでは標準化が完成しない、BPOの設計によっては社内に業務ノウハウが残りにくくなる場合がある。こうした中間領域が、BPaaSの活用余地になります。
自社にどの業務モデルが合うかを整理したい方は、一度ご相談ください。

