給与支払報告書とは?書き方や提出方法、作成時の注意点を分かりやすく解説
給与の支払いを行っている事業者は各市区町村に対し、住民税の算定基準となる「給与支払報告書」を提出しなければなりません。給与支払報告書の提出は事業者の義務であり、期限までに提出しなかった場合、罰則が科されるおそれがあるとともに従業員にも迷惑をかける可能性があります。 今回は、期限までに遅れず提出できるよう、給与支払報告書の書き方や提出方法について、分かりやすく解説します。

01給与支払報告書とは
まず、給与支払報告書の役割や提出義務者、対象者のほか、給与支払報告書と類似した書類との違いなどについて確認していきましょう。
給与支払報告書の役割
給与支払報告書は、住民税の額を確定するために必要となる書類です。市区町村では、給与支払報告書をもとに、従業員や役員の住民税の金額を算定することになります。
給与支払報告書の提出義務者と対象者
給与支払報告書の提出が求められるのは、従業員を雇用している事業者です。個人事業主であっても、法人であっても、従業員を雇用し、給与を支払っている場合には給与支払報告書を作成し、提出しなければなりません。また、法人の場合は、従業員を雇用していない場合であっても、役員に給与を支払っているため、必ず提出が必要になります。
給与支払報告書における報告対象者は、前年中に給与を支払ったすべての従業員と役員です。給与を支払った従業員であれば、雇用形態に関わらず全員分の提出が必要になります。つまり、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイト、役員なども報告対象に含まれるのです。
また、前年中に退職した従業員も原則として、給与支払報告書の対象となります。ただし、その従業員に対する給与の支払い総額が年間30万円以下の場合は提出が免除されるケースもあります。しかしながら、市区町村によっては給与支払い総額が年30万円以下であっても給与支払報告書の提出を求めるケースも少なくないため、該当者がいる場合には、市区町村に事前に確認しておくことが大切です。
給与支払報告書の提出先と提出期限
給与支払報告書の提出先は、当該年の1月1日時点で従業員が居住している市区町村です。ただし、退職者の場合は、退職時点で居住していた市区町村が提出先となる点に注意しなければなりません。
また、給与支払報告書の提出期限は、毎年1月31日までです。31日が土日祝日にあたる場合は、翌平日が期限となります。
給与支払報告書と源泉徴収票の違い
給与支払報告書は、1年間の給与支払額が確定し、年末調整を済ませた後に作成する書類です。年末調整後に作成する書類には、給与支払報告書のほか、源泉徴収票があります。
源泉徴収票の記入内容と給与支払報告書の記入内容は、基本的に同じものとなりますが、源泉徴収票は、1年間の給与所得額と源泉徴収をした所得税額を証明するための書類です。一方、給与支払報告書は住民税の額を算定するために提出する書類であり、提出目的が異なります。
また、給与支払報告書は、従業員が1月1日時点で居住する市区町村に提出しますが、源泉徴収票は企業の所在地を管轄する税務署と従業員に1部ずつ提出する点にも違いが見られます。
給与支払報告書と給与支払証明書の違い
給与支払報告書と似た書類に給与支払証明書があります。しかし、両者は提出先や用途がまったく異なる書類です。
給与支払報告書は、従業員の住民税額を確定するために市区町村に提出する書類であるのに対し、給与支払証明書は、ローンの申請時など、収入の証明書が必要な際に発行する書類です。給与支払証明書には決まったフォーマットがあるわけではありません。また、公的な書類ではないため、提出先の要望に応じ、適切な形で企業が独自に作成する書類となります。
02給与支払報告書として提出する書類
給与支払報告書は、個人別明細書と総括表の2種類の書類で構成されています。ただし、状況によっては普通徴収切替理由書の提出が必要になる場合もあります。それぞれについてご説明します。
個人別明細書
個人別明細書は、市区町村に対し、個人の住民税の算定のために必要な情報を提供する書類です。そのため、従業員一人につき一枚の作成が必要になり、記入項目は源泉徴収票と同じ、次のような項目となります。
・従業員の氏名
・住所
・生年月日
・マイナンバー
・給与支払額
・社会保険料の控除額
総括表
総括表は、給与支払報告書を何人分提出したかを示す書類です。個人別明細書は、総括表とセットにして提出する必要があり、総括表は市区町村に個人別明細書を提出する際の表紙のような役割を担います。例えば、1つの自治体に3人の従業員が居住している場合は、総括表1枚に対し、個人別明細書3枚をセットにして提出することとなります。したがって、総括表と個人別明細書の数は必ずしも一致しません。
各市区町村から事前に総括表が送付されるため、送付されてきた総括表を使用するケースが一般的です。
普通徴収切替理由書
通常、住民税は給与から天引きされ、企業が従業員に代わって納付する「特別徴収」という形で納税されています。しかし、特別徴収ではなく、個人が個別に納付する「普通徴収」に切り替える際に必要となる書類が普通徴収切替理由書です。ただし、自由に普通徴収に切り替えられるわけではありません。次のいずれかに該当した場合は、普通徴収に切り替えが必要になり、普通徴収切替理由書の提出が必要です。
・総従業員数が2人以下である
・ほかの事業所で特別徴収をしている
・給与が少額で特別徴収額を引くことができない
・給与の支払いが不定期である
・個人事業主の事業専従者で、専従者給与を受けている
また、eLTAXや光ディスクで電子申告を行う場合は、普通徴収切替理由書の提出は不要ですが、個人別明細書を提出する際には、摘要欄に該当する理由の符号を記入しなければなりません。
03給与支払報告書の書き方
給与支払報告書は、各市区町村のホームページからダウンロードが可能です。総括表は市区町村から事前に送付されるものの、総務省のホームページからダウンロードすることもできます。
給与支払報告書の作成方法についてご説明します。
給与支払報告書の作成に必要な書類
給与支払報告書を作成する際には事前に以下の書類を用意しておくと、スムーズに記入できるようになります。
・扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除申告書兼所得金額調整控除申告書
個人別明細書の書き方
個人別明細書の記入内容は、源泉徴収票の記入内容と同じです。手書きで作成する場合は、給与支払報告書と源泉徴収票が複写式になっているため、一度に給与支払報告書と源泉徴収票を作成することができます。また、ホームページからダウンロードする場合には、1枚目に入力することで同じ項目のセルに反映されるため、入力の手間を軽減することが可能です。
各項目の記入方法について解説します。
・支払いを受ける者の情報を記入
給与の支払いを受ける従業員の住所、氏名、個人番号(マイナンバー)、役職名を記入します。「受給者番号」を記入する欄がありますが、受給者番号とは社員番号など、事業所が従業員へ付している番号です。特に番号を付していない場合は、記入の必要はありません。また、役職に就いていない従業員の場合、役職名を記入せず、空欄のままにしておきます。
・給与支給額等の金額を記入
次に、給与の支払金額の情報を記入します。「種別」の欄には「給与・賞与」と記入し、年末調整後の給与・賞与の支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額を記入します。
・配偶者控除や控除対象扶養親族などに関する情報を記入
控除対象配偶者の有無を記入します。配偶者の年齢が70歳以上の場合は「老人」の欄に〇を入れます。「配偶者(特別)控除の額」の欄には、配偶者控除の額、または配偶者特別控除の額を記入します。
また「控除対象扶養親族の数」の箇所には、配偶者を除いた扶養親族の人数を記入します。そのほか、16歳未満の扶養親族の数、本人を除く障害者の数などを記入します。
・控除額に関する情報を記入
社会保険料等の金額、生命保険料の控除額、地震保険料の控除額、住宅借入金特別控除の額をそれぞれ該当する箇所に記入します。
・控除に関する情報を記入
生命保険料の金額の内訳、介護医療保険の金額、新個人年金保険料の金額、旧個人年金保険料の金額、住宅借入金等特別控除額の内訳などを記入します。
・控除対象配偶者に関する情報を記入
配偶者の氏名、マイナンバー、配偶者の合計所得額などを記入します。
・控除対象扶養親族、16歳未満の扶養親族を記入
控除対象扶養親族と16歳未満の扶養親族の氏名とマイナンバーを記入します。区分欄には、次のように記載します。
居住者の場合:空欄のまま
非居住者のうち、30歳未満または70歳以上:01
非居住者のうち、30歳以上70歳未満の留学生:02
非居住者のうち、30歳以上70歳未満の障害者:03
非居住者のうち、30歳以上70歳未満で38万円以上の送金を受けている人:04
・中途就職や退職の情報、生年月日を記入
従業員の就職や退職日と生年月日を記入します。
・摘要欄への記入
摘要欄には、該当するものがある場合、以下のような情報を記入します。
①控除対象扶養親族等または16歳未満の扶養親族が5人以上いる場合には、5人目以降の氏名を記入します。氏名の前に()書きの数字を入れ、所定の「5人目以降の控除対象扶養親族の個人番号」記入欄に記入する個人番号との対応関係が分かるように記入します。
また、5人目以降の控除対象扶養親族等または16歳未満の扶養親族が次に該当する場合は、以下のようにそれぞれの内容を記入します。
(1)16歳未満の扶養親族の場合は「(年少)」と記入する。
(2)控除対象扶養親族が非居住者の場合は「控除対象扶養親族の分類」または「特定親族特別控除額の区分」における区分を記入。16歳未満の非居住者の場合は「(非居住者)」と記入する。
(3)特定親族の場合は、特定親族特別控除の額に応じて「特定親族特別控除の区分」における区分を記入する。
②特別徴収ができない場合は、普通徴収外という理由の符号を記入する。
③ほかの支払者が支払った給与等を通算して年末調整を行った場合は、ほかの支払者の氏名・名称、ほかの支払者が支払った給与等の金額、徴収した税額、控除した社会保険料等を記入する。
④合計所得金額が58万円以下の生計を一にする配偶者であっても、従業員の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除が適用されません。ただし配偶者が障害者、または同居特別障害者に該当する場合は障害者控除を受けることができ、その場合は摘要欄に配偶者の氏名を書き、(同配)と記入します。
⑤所得金額調整控除の適用がある場合、年齢が23歳未満または特別障害者である扶養親族が「控除対象扶養親族」欄、「16歳未満の扶養親族」欄のいずれにも記入されていないときは「氏名(調整)」と記入します。
⑥租税条約が適用されている場合は、該当する条約名と条文を記入します。
⑦丙欄の場合には必ず「丙欄」と記入します。
⑧海外出張の場合は出国先と赴任期間を記入します。
⑨退職所得のある配偶者または親族等の合計所得金額を、退職所得の額を含めずに計算した結果、納税者が個人住民税の配偶者(特別)控除、扶養控除等を受けることができる場合には、その配偶者または親族等に関する必要事項を記入し、氏名の前に(退)と記入し、「5人目以降の控除対象扶養親族の個人番号」または「5人目以降の16歳未満の扶養親族の個人番号」の欄に、マイナンバーを記入します。
必要事項とは次の項目です。
・氏名
・配偶者または扶養親族、特定親族である場合はその旨
・生年月日
・住所
・障害者または特別障害者である場合はその旨
・国外居住する非居住者である場合はその旨
・退職所得を除く合計所得金額の見積額
・納税者が寡婦または一人親である場合はその旨
総括表の書き方
続いて、総括表の書き方について項目ごとに解説します。
・指定番号についての記入
提出先の市区町村から付与される指定番号を記入します。指定番号がなければ記入する必要はありません。
・給与の支払い期間についての記入
給与を支払った期間を記入します。
・給与支払者の個人番号または法人番号についての記入
給与支払者が個人事業主の場合はマイナンバー、法人の場合は法人番号を記入します。
・給与支払者の氏名または名称についての記入
会社名や屋号、氏名を記入します。
・所得税の源泉徴収をしている事務所または事業所の名称についての記入
従業員への給与事務を行っている事業所の名称を記入し、その下にその事業所の所在地を記入します。
・給与支払者が法人である場合の代表者の氏名についての記入
会社の代表者の名前を記入します。
・連絡者の氏名、所属課、係名および電話番号についての記入
給与計算を行っている部署の代表者の氏名、連絡先を記入します。
・事業種目についての記入
会社の業種を記入します。
・受給者総人員の記入
1月1日時点で給与の支払いをする事業所から給与の支払いを受けている人の総人数を記入します。
・報告人員の記入
個人別明細書を提出する人数を、特別徴収対象者、普通徴収対象者(退職者)、普通徴収対象者(退職者を除く)の内訳別に書き、その合計数を記入します。
・所轄税務署名の記入
事業所を管轄する税務署を記入します。
・給与の支払い方法およびその期日についての記入
時給、日給、月給など、給与の支払い方法と支払日について記入します。
・納入書の送付の選択
納入書の送付を希望するかどうか、該当するものに〇をつけます。
04給与支払報告書の作成から提出までの流れ
給与支払報告書の作成から提出までの流れを3つのステップに分けてご紹介します。
総括表の送付
12月末までに自治体から総括表が送付されてきます。
年末調整の実施
12月中に年末調整を行い、個人別明細書に記入する金額を確定させます。
個人別明細書と総括表の作成
個人別明細書と総括表を作成していきます。手書きの場合は、源泉徴収票を作成する際、個人別明細書も同時に作成することが可能です。
個人別明細書と総括表を作成し、市区町村ごとに書類をまとめます。
市区町村への提出
書類が完成したら、市区町村に提出します。提出期限は1月31日までです。
提出方法は、郵送または窓口に持参して書面で提出する方法、光ディスク等で提出する方法、eLTAX(地方税ポータルシステム)で提出する方法があります。eLTAXを初めて利用する際には、Webサイト上から利用届出を行い、利用者IDを取得しなければなりません。
05給与支払報告書の作成・提出時の注意点
給与支払報告書を作成、提出する際に注意が必要な点をご紹介します。
eLTAXまたは光ディスクによる電子提出が義務になるケースも
前々年に税務署に提出した源泉徴収票が100枚を超える場合、給与支払報告書の紙での提出は認められていません。eLTAXまたは光ディスク等による電子提出を行わなければならない点に注意が必要です。
eLTAXを利用した場合、給与支払報告書と源泉徴収票の一括作成ができ、税務署と対象の市区町村に対し、一元的に送信することができます。各市区町村に分けて提出する必要がないため、送信時の手間を大きく軽減できます。
退職者についても提出が必要
住民税は、前年の所得額に対して課される税金であるため、在職者だけでなく退職者についても給与支払報告書の提出が必要です。退職者については、1月1日時点の居住地ではなく、退職時点での居住地(住所地)の市区町村への提出が必要になります。
退職者の給与支払報告書を提出する際には、個人別明細書に退職年月日を忘れずに記載するようにしましょう。
従業員のマイナンバー情報が必要
給与支払報告書には従業員のマイナンバーの記入も必要となるため、事前に従業員のマイナンバー情報を取得しておくことを忘れないようにしましょう。
給与支払報告書を提出しなかった場合のリスク
給与支払報告書の提出は、給与の支払いを行っている事業者に課せられている義務です。そのため、給与支払報告書を提出しなかった場合、地方税法において罰則が規定されています。給与支払報告書の提出義務違反の場合、1年以下の禁固刑もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
さらに、給与支払報告書を提出しなければ、従業員個人の住民税の金額を決定できません。そのため、住民税の計算が遅れ、一括納付を求められるおそれもあります。一括納付となると負担額が大きくなるため、従業員にとっても不利益な状況を招いてしまう可能性があります。給与支払報告書は、必ず1月31日までに提出するようにしましょう。
06まとめ
給与支払報告書は、住民税の額を決定するために必要となる書類です。個人事業主であるか法人であるかに関わらず、役員や従業員に給与を支払っている事業主は給与支払報告書を提出しなければなりません。
給与支払報告書は、個人別明細書と総括表の2つで構成され、それぞれをセットにして従業員が1月1日時点で居住している市区町村に提出をします。ただし、退職者については退職時点で居住していた市区町村に提出が必要になる点に注意しなければなりません。
万が一、提出が遅れた場合、罰則が科せられるだけでなく、従業員にも不便をかけることになるため期限内に提出することが大切です。
▶『クロスビリング』のサービス詳細はこちら
資料請求フォーム




